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【第五回】ユースビジョン 加藤さん【La vitaプロジェクト】

加藤 胡桃

1992年生まれ。高校までは地元富山県で過ごし、2011年静岡県浜松市の大学に進学。

東日本大震災の影響を受け、「何かしたい」との想いから震災復興支援を行う学生団体へ入団、4年間にわたり活動を継続。その他、多文化共生・異文化理解をテーマにしたWS企画や、浜松市市民協働センター運営委員、学生ボランティアネットワーク事業への参画等、様々な活動に取り組む。 

大学卒業後、人材・広告会社の営業職を経て、浜松市のNPO法人に入職し、中間支援事業に携わる。その後、若者支援に携わりたいという想いから、2016年度よりユースビジョンに入職し、輝く学生応援プロジェクト(学生Place+)のコーディネーターとして勤務している。



今回インタビューを受けていただいたのはNPO法人ユースビジョンで事業ディレクターを務める加藤胡桃さんです。NPOで働く若い人の生の声を聞きたいということでインタビューをお願いしたところ、快く引き受けてくださりました。インタビューを通して印象的だったのは人間関係が仕事にもたらす影響力です。「何をやるかじゃなく、だれとやるかが大事」この先就職活動が待つ我々にとって非常に有意義なお話を聞くことができました。

 

【2018 京都 学生PLACE+】

    ユースビジョンの運営する事業の一つに「輝く学生応援プロジェクト学生PLACE+」というものがある。京都でボランティアをしたいという学生をサポートするための拠点で、加藤さんは今そこでコーディネーターを勤めている。学生PLACE+が運営する事業は「学生ボランティアチャレンジ」と「むすぶネット」の二つである。地域に出たいとかボランティアしたいとか、そういった学生が地域に出ていくためのサポートをするのが通称ボラ活!こと「学生ボランティアチャレンジ」である。特技を活かして地域で活動したいと考える学生サークルと地域団体を結び、一緒に盛り上げるのが「むすぶネット」である。学生PLACE+は上記の事業を通して社会貢献活動に取り組む学生のサポートや地域と学生をつなぐこと、学生の相談役となったり活動の機会を紹介したりしている。

 

 私が初めて加藤さんと出会ったのもボラ活だった。ボラ活とは学生ボランティアチャレンジというプログラムの名称である。初めてボランティアをする学生向けのもので、参加者は25時間以上のボランティア活動をすることで活動修了証が進呈される。参加の動機は自己成長や就職活動のためなど人それぞれであった。(ショーン)

 

 

【2016 浜松 前職】 

 2016年まで加藤さんは今とは別のNPOで中間支援をしていた。ユースビジョンに勤めるきっかけとなったのは大学生時代の恩師の呼びかけだった。その人はユースビジョンの代表とも親交があった。職員に一人欠員があるのでうちに来ないかと誘われ、加藤さんは京都へやってきた。

 

 加藤さんは自身が持つもともとの行動力、フットワークの軽さと人脈ネットワークからもたらされる、あらゆるチャンスを推進力にしてキャリアを積んできたように感じた。今の仕事を一生続けるかどうかはわからないと言っていたが、いずれにしても今後も人脈が加藤さんの将来に大きく関わってくるのではないかと思った。(サカエ)

 

 

【2015 名古屋 会社員】

 2015年、加藤さんは大学卒業後に人材広告会社へ就職した。企業説明会で「この人と仕事がしたい」と思える人と出会ったのがきっかけだった。しかし職場では人間関係がうまくいかなかった。何かを始める決意より辞める決意の方が苦しいことに気づき、加藤さんは消耗していった。

 浜松に遊びに帰っていた時、大学の後輩に偶然出会った。彼女はNPOでアルバイトをしており、彼女の上司とは加藤さんも面識があった。彼女の上司から「良ければうちに来ない?」と電話があった。それで転職の決心がついたのだった。

 「何をやるかじゃなく、誰とやるかが大事」これは加藤さん行きつけの喫茶店のマスターの言葉だ。たとえ得意じゃない仕事でも、気の合う仲間や尊敬できる人たちとやっていたら楽しい。一方で、好きなことでも周囲の環境に恵まれていなければ楽しくないし、そのストレスは大きい。身に染みてそう感じていると加藤さんは言う。

 

 仕事に就いた理由を聞いて、最初からなりたい職があってそれになる人よりも、加藤さんみたく流れに身を任せたらその仕事に就いてた、みたいな人の方が多いんじゃないかなって思った。人脈もやっぱり大事…。仕事を離れた原因は意外だった。ああ、仕事は好きなだけじゃダメなんやな。誰とやるかは確かに大事やな。私は仕事相手は誰でもいいけど、良い人と出会えるか出会えないかでその後の成長に差が出ると思うな。(繁々)

 

 「これは失敗だったなと思う経験はありますか」という質問に対して「いや、ない」と答えた加藤さん。「その時は本当にしんどくても、月日が経つと自分の未熟さが原因だったり反省が見えてくるので失敗だとは思わない」そうです。「人生はそれの繰り返しだと思っているから。出会わなければよかったと思う人もいない。もちろん失敗はたくさんしてる。でも失敗しなきゃよかったと思ったことはない。」俺なら真っ先にあいつが悪いんだとか、店が悪い、早く忘れようとか思ってしまう。外部環境に責任転嫁せずに建設的に考えられることは本当にすごいことだと思った。

 

 

【2011 浜松 大学生】

 人生の転機は東日本大震災だった。当時大学一年生だった加藤さんは、なにかできることはないかという漠然とした思いを抱いていた。先輩にその話をしたところ「私たち今度東北に行くけど来る?」と誘われ、学生団体に入り、現地へ向かった。加藤さんの所属する学生団体は東北の様子を浜松に伝える活動をした。どういう被害があったか、背景にどんな要因があったのか、どういう備えがあればそれを回避できたのか、それから普段から顔の見える関係を築いておくことの大切さを伝えた。一度でなく継続的に現地に行くことの大切さや、伝えて行くことの大切さをその時学んだという。

 

【NPOで働くということ】

「会う人が面白い。すごい熱量を持った人もいるし、そういう人に会えるのは自身の成長にもなる。フットワークも軽く動けるので働きやすいと思います…でも一番は面白いから(笑)いつか企業に就職することがあったとしても、なんらかの形でNPOには関わり続けると思います。」

 

 普段からこの次はどんな仕事をしようかなと考えているあたり、やることが前向きだと思った。回答も明瞭ではっきり話されるし、すごく聞き上手な方でもあると思った。(大谷)

 

 根底にあるのは若者・学生を支援したいという気持ちなのだろう。そういう思いもあって加藤さんには今の職場が非常に快適であるようだ。企業で働くこととNPOで働くこと、そのどちらにも優劣をつけることはできない。ただ「人間関係」というものが大きな影響力を有することは間違いなく言えることだ。加藤さんを例にすると、職場内外にかかわらず人間関係が広範であれば、思わぬ救いの手が差し伸べられることもあるということだ。自分自身を良くも悪くも変えてくれるのは、自分を取り巻く人間関係なのだ。(友田)