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【第六回】アーティスト、土山さん【La Vitaプロジェクト】

土山久美子

音楽専門学校を卒業後

雑誌のモデル、エキストラとしてお仕事をしていく中で撮影現場に触れる。

Giza studio主催、SSコンテストにてCDNEWS賞を受賞。

mini album「毒りんご」をリリース。

バンド「moca」を結成。

現在は映画監督とミュージシャンとして活動している。


———学生時代について教えてください

 

「バンドをやってみたいと思い高校から軽音部に入ったんですが、ゆるくて。もっと本気でやりたいと思って、楽器屋さんにメンバー募集の張り紙を見つけに行って連絡しました。音楽の仕事があれば回すと言われ、プロダクションにも入りました。また、レコード会社のオーディションで賞をもらって、デビューしました。その後独立して活動しているうちに、高校のバンドメンバーと出会い、「moca」を結成しました。」

 


———ミュージシャンや映画監督は安定した収入のイメージが無いのですが、不安はありませんでしたか。

「若い時は不安でした。ミュージシャンになれたとしても、ある年齢になったら人気がなくなって続けられないんじゃないかというイメージがありました。でも、一番好きなことが音楽だし、どんな大金があっても音楽がしたい。そう思うと、最低限収入があれば大丈夫かなと思った。音楽をやることが、自分の自然体に近い形だと思っています。」


———なぜミュージシャンでありながら映画監督をされているのですか

「私の夢は、大きなホールでたくさんの人が自分の歌を見てくれること。その夢を思い描いていた経過に映画がいいなと思ったんです。映画に登場する音楽を好きになってくれる人がいれば、自分達のことを知ってもらえるきっかけにもなる。知り合いに俳優や小説家がいたため、可能性を感じ映画を作り始めました。」

 


 
———人生の転機はありますか

「中学生まではずっと水泳に熱中していたんです。音楽もずっと好きでしたが、水泳のように実績が出るものじゃないし楽譜も読めなかったので、プロになろうとは夢にも思っていませんでした。でも受験で水泳を辞めたことをきっかけに、やりたいことが自然と音楽へ逆転していきました。
あとは、レコード会社に入った時です。社会的に認められた感じがしたというか。音楽は遊びとみられがちですが、会社に入ると精神的にも環境的にも変わりました。
若い時は視野が狭いから(どうやって生きて行くか)選択肢を知らない。だからたくさんの不安が立ちはだかって、精神的に突っ切れませんでした。レコード会社に入ったことで、ここでやり切ってみようと思え、さらに集中できるようになりました。」


———一番の失敗や挫折はありますか。

「失敗した当時は落ち込むけれど、今考えるとたいしたことではなかったなと思います。時代が変化するにつれ様々な手段も出てきましたし、思い込んでいた道とは別の方法でアプローチできる。想定外の展開になった事を挫折というよりかは、それで最終的にうまくいく場合がほとんどなので、挫折は思い込みも入っていると思います。」

 


———今まで落ち込む事もあったかと思いますが、その経験を経て得た、物事が上手くいく方法はありますか。

「自分の状態がいい方が上手くいきますね。自分自身がポジティブな状態を、自分で意識して作る事が秘訣だと思います。後は、何でも自分でしないといけないと思わないことです。人それぞれ得意なことが違うので、自分は得意な事ややりたい事を率先してやって、それ以外は他人に任せてしまうとか。1種のわがままを言うことって凄く大事だなと気づきました。

それともう1つ、純粋に好きなものは、どんどん周りに言った方が良いです。自分のこともより知ってもらえるし、周りからも気にかけてもらいやすいので、どんどん輪が広がっていきます。」


———学生時代にやっておけばよかったと思うことはありますか。

「自分のやりたい事をばーっと書き出すことです。どんな小さい事でもいい。海外旅行に行くとか、音楽を弾きたいとか。それを自分で分かっていると、チャンスが来た時にすぐ飛びつけると思います。やりたい事は毎日変わりますが、毎日考えることで、自分の本心が見えてきます。私は、こうして書き出していくことで、簡単な事を後回しにしがちだなと気づきました。」


———仕事とは何だと思いますか。

「幸せを実現させるための手段だと思っています。何度か、『1億円あったら何しよう』と思いながら色々やりたい事を書き出してみたんですが、どれも1億円なくても叶いそうなものなんです。それはつまり、そこまで必死に収入のいい仕事をしてお金を稼がなくても、私は幸せに生きられるということ。私は、『幸せ=人生の満足度が高い』という捉え方をしているので、満足度を上げるための仕事だとおもって進路を決めていくと、いい仕事に出会えるかもしれないですね。」


———昔の自分に助言するなら何と言いますか?

「そんなに怖がらなくていいから、自分を信じて勇気を持って突き進んで欲しい。思っているほど怖くないよと言いたいです。失敗してもいいからやり切るほうが、あの時頑張ったなとすがすがしい気持ちになれると思います。」


———最後に、凄く壮大な質問なんですが・・・。土山さんにとって人生とはどんなものですか。

「私の人生のイメージは、時間軸の上に成り立つ直線的な線ではなく、人生そのものが大きな円。この円(人生)の中に、自分のやりたい事を小さい事から大きな事まで入れる。それを順番に、やれる時にやれる事をやっていこう、という風に考えています。つまり、自分の夢を自分で叶えてあげるという事。あの美味しいお店のケーキが食べたい、という事も、映画が作りたい、バンドがしたい、という事も、自分で自分の夢を叶えてあげるという作業。一般的には大きな事を成し遂げるとか、〇〇の仕事をする、だけが夢だと思っている人が多いけれど、そうではなくて。自分の本当にしたい事を自分にさせてあげるという事が、自分で自分を幸せにしていくという事だと思います。」